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「長時間労働」と労働法(その2 残業代=割増賃金の算定方法)
「関西電力、社員6人の残業代未払いで是正勧告」(読売オンライン2017年01月18日 13時39分)
上記の記事のように、大企業でも残業代未払いはあります。
さて、そのような残業代(割増賃金)は,次のように算出されます(割増賃金について明確な合意がない場合を想定します)。
①(労働契約に基づく1時間当たりの単価)
×
②(時間外労働の時間)
×
③(労働基準法に基づく割増率)
①(労働契約に基づく1時間当たりの単価)については,
まずは,1か月ごとの給与を確定させます(月額賃金)。
※ここでいう給与には,家族手当・通勤手当・別居手当・住宅手当などは除かれます。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-5a.pdf
次に,1カ月当たりの所定労働時間を計算します。
※例えば,月22日出勤,1日8時間(残業時間は含めない)であれば,176時間(22日×8)となります。
最後に,月額賃金を所定労働時間で割って1時間当たりの単価を計算することになります。
※例えば,月額給与30万円,所定労働時間176時間であれば,1時間当たりの単価は1705円(30万÷176時間)になります。
②(時間外労働の時間)については,
例えば,出勤時間が午前9時~午後6時(休憩1時間)の場合において,午前9時から午後9時まで働いたとしましょう。
その場合には,午後6時~午後9時までの3時間が法定外残業(労基法で定められた1日8時間を超える残業)になるので,時間外労働は3時間ということになります。
これに対して,出勤時間が午前9時~午後5時(休憩1時間)の場合において,午前9時から午後6時まで働いたとしましょう。
この場合には,午後5時~午後6時までの1時間の残業がありますが,労基法で定められた1日8時間の範囲内であることから,割増賃金率(③)が加算される法定の時間外労働ではなく,割増賃金率(③)が加算されない法内の時間外労働として,1時間分の時給(単価)相当分が支払うべき金額となります。
時間外労働の時間については,タイムカードや業務日誌などによって,確定することになります。
※時間外労働(②)については,経営者からすれば,「勝手に朝早く来て,タイムカードを押しただけじゃんか」「外出先で,喫茶店にいただけで仕事してないじゃん!」など,労働時間ではないとして,労働時間を減らす方向での言い分が多々あります。
他方,労働者からすれば,「休憩時間も電話対応などで実際の休憩はなかった」「取引先との接待の強制的に付き合わされた」「休日なのに,会社の親睦会名目での運動会に参加させられた」など,労働時間を増やす方向での言い分が多々あります。
また,労働時間については,変形労働時間制やフレックスタイム制など,通常の1日8時間・1週40時間という労働時間法制を変更することができる制度もあります。
さらには,割増賃金を支払わなくてもいいタイプの労働者(=管理監督者)も存在します。
これらの点についての詳細は,またの機会にお話ししますね。
③(労働基準法に基づく割増率)については,
- 通常の時間外労働(法定外労働) :::25%
- 法定休日労働 :::35%
- 深夜労働 :::25%
- 深夜・時間外労働 :::50%
- 深夜・法定休日労働 :::60%
- 時間外労働が1か月に60時間を超える場合 :::50%
となっております(次も参考に)。
※http://sougou-roumu.com/kaiseirouki2010.html
以上が,単純な時間外労働に基づく割増賃金の算定方法の解説になります。
ご参考までに。
弁護士 仲宗根 朝洋
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仲宗根 朝洋
沖縄弁護士会 登録番号:48121