TOPICS  『DeNA、「まとめサイト」全て非公開=無断引用で社長会見へ』(時事ドットコムニュース)について

TOPICS

『DeNA、「まとめサイト」全て非公開=無断引用で社長会見へ』(時事ドットコムニュース)について

2016.12.07

法律論文やこのホームページでも、他者の意見や論評などを「引用」することがあります。

本日の表題は、まとめサイトの記事が他から『無断引用』されているというニュース。

 

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016120500796&g=eco

 

内容は定かではないですが、著作権法違反が問題となり得そうです。

どういうことかと言いますと・・・・

 

● 著作権法とは ●


http://www.jiji.com/jc/article?k=2016120500796&g=eco

まず、著作権法は、「著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与するこ
とを目的」とした法律です。

要するに、著作物に関する著作権の公正な利用を確保(②)しつつ、著作権者の権利保護を図る(①)という法律です。

 

著作権法のざっくりとした概要としては、

著作物を創作する著作者には、著作権及び著作人格権があり、また、その著作権等を侵害等する者に対する差止請求権や損害の推定による救済があり、さらには、著作権侵害等には刑罰が定められており、これらの規定によって、著作権者の権利保護が図られるという内容(①)、

また、

著作権としての保護期間を設け、また、一定の利用目的等に応じた著作者以外の者による著作物の(同意なき)利用(=著作権の制限)を認めることで、著作物に関する著作権の公正な利用の確保が図られるという内容(②)

を定めています。

 

● 「引用」 ●


 

さて、今回のニュースのポイントは、(他人の記事の)『無断引用』という点。

事実関係は不明ですが、

無断引用か否かを判断するにあたっては、

1.他人の記事や写真等が、「著作物」に該当するか否か

2.著作物に該当するとしても、他人(=著作者)とは誰か(個人、法人著作)

3.無断引用が「複製」にあたるか否か

4.「複製」に該当する(=著作権の一内容である複製権の侵害である)としても、その例外(複製が許される場合)としての「引用」に該当するか

という思考過程になるでしょう(おそらく)。

そのうち、4の「引用」(著作権法32条1項)については、「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるもの」である必要があります。

そして、引用とは、「紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいい、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならない」(モンタージュ写真事件―最判昭和55年3月28日)とされています。

要するに、引用していること(部分)が明らかであること(明瞭区分性)、あくまでも引用部分は従たる役割であること(主従関係)が要求されています。

ただし、明瞭区分性や主従関係にとらわれず、法文どおりに、「著作権法32条1項にいう引用としての利用に当たるか否かの判断においては、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない」とする裁判例もあります(絵画鑑定書事件‐知財高判平成22年10月13日)。

後者の裁判例の判断基準で言えば、結果的には総合考慮ですね。

まとめサイトの代表格といえば、LINEが運営する「NAVERまとめ」。

今回問題となったサイトは、DeNAの健康情報サイト「WELQ」。WELQに関しては、根拠なく医薬品等の効能を謳うなど、薬事法違反という指摘もあるようですが。

 

● さいごに ●


 

コンテンツビジネスにおけるビジネスモデルにおいては、著作権侵害、肖像権侵害、パブリシティー権侵害、その他広告規制(薬事法、景品表示法など)という法的リスクの特定及び評価と対応策をお忘れなく。

まとめ記事製作者などの外部委託者に対してコンテンツ作成にかかるインセンティブを与えつつ、上記法的リスクをどのようにコントロールすべきか、というような制度設計が問われていますね。