TOPICS  「長時間労働」と労働法(その1)

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「長時間労働」と労働法(その1)

2016.12.09

本日は、こんな記事がありましたので、ご紹介します。

「電通事件で注目される「長時間労働」対策 エステ大手TBCが投じた一石」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161208-00010007-bfj-soci

 

ここでいう電通事件とは、おそらく最近のあの出来事(女性新入社員による過労自殺の件)。

「電通本社と3支社に大規模な強制捜査 労基法違反の疑い」
http://www.asahi.com/articles/ASJC73108JC7ULFA004.html?ref=huffpostjp

 

●労働基準法の基本(労働時間規制)●


 

さて、労働基準法では、

労働時間は、原則として、週40時間、1日8時間(第32条)
これを越えるような労働時間の勤務が想定される場合には、労使協定で定めた上でならば、週40時間超、1日8時間超の労働があっても、例外的にOK(第36条。もちろん、上限はありますが)
という形で労働時間を規制しています。

(労働時間)
第32条  使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

(時間外及び休日の労働)
第36条  使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
2  厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。
3  第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。
4  行政官庁は、第二項の基準に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

 

●時間外労働と割増賃金●


 

そして、時間外労働(いわば法定外残業)については,
会社(使用者)は、労働者(従業員)に対して、割増残業代を支払わなければならないのです。

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第37条  使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2  前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
3  使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
4  使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
5  第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

 

●時間外労働と刑罰●


 

さらに、36協定の定め等もなく、時間外労働をさせている場合には,法32条違反により、刑罰として「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処せられる可能性もあるのです。

第119条  次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一  第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第一項ただし書、第三十七条、第三十九条、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
二  第三十三条第二項、第九十六条の二第二項又は第九十六条の三第一項の規定による命令に違反した者
三  第四十条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者
四  第七十条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第六十二条又は第六十四条の三の規定に係る部分に限る。)に違反した者

 

●違法残業で書類送検された例●


 

最近でも、名のある会社が、労働基準法32条違反として、書類送検された事案もありますね。

『月100時間の違法残業でALSOK静岡を送検 浜松労基署』
https://www.rodo.co.jp/column/6842/

『「和食さと」運営会社を書類送検=違法時間外労働の疑い-大阪労働局 』
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016092900898&g=soc

 

ということで、事業者の皆さん、時間外労働については、刑罰という怖いリスクがあり得るという点に、ご留意くださいませ。

 

 

◎本日の締め◎


 

今日は簡単に。

「長時間労働」と労働法(その2)に続く。